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東京23区中心にタクシー料金が15年ぶりに値上げへ。【2022年3月26日】

東京23区中心にタクシー料金が15年ぶりに値上げへ。【2022年3月26日】

公共交通機関は、どうしても世の中の煽りを受けやすい事業です。

鉄道にしても、あれだけ通勤ラッシュが問題になっていて「複々線化」や「オフピークにご協力を」と言っていたものの、コロナ禍によってお客様の収益が減り、減便をせざる得ない状況になりました。

バスも地域の重要な足という大きな役割を担っていますが数十年前に比べると明らかに住宅地の減便が顕著になってきています。
駅から離れた住宅地も高齢化や空き家が増え、バスに乗る方が減った印象です。

いずれも昨今では、運賃の値上げを断行するなど、避けて通れない対策が続いていることは否定できません。

では、同じ公共交通機関の中でタクシーはどうでしょうか?
今回、近年タクシー業界では「値下げ敢行」や「変動制実証実験」などがニュースで取り上げられていましたが、タクシー業界も運賃値上げの波が押し寄せてきているようです…。

東京23区中心にタクシー料金が15年ぶりに値上げへ。

東京都首都圏を営業区域とするタクシー料金が、値上げをすることが明らかになりました。
早ければ、今年度2022年秋にも敢行予定です。

値上げエリアの詳細はタクシー業界で「東京特別区・武三交通圏」と呼ばれる区域で、内訳は東京23区(中央区、千代田区、文京区、港区、新宿区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区、板橋区、豊島区、北区、台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区)、武蔵野市、三鷹市内のタクシー会社が対象になります。

現在、東京首都圏の現在の初乗り運賃は『1.052kmまで420円』、以後加算運賃は『233mごとに80円』となっており、高速道路の走行時以外でタクシーのスピードが時速10km以下になると、時間を距離に換算する「時間距離併用運賃(1分25秒ごとに80円加算)」が適用となります。
※高速道路利用時の料金・迎車の際にかかる料金は別途発生しますのでご注意ください。

ちなみに前回の運賃改定は2019年12月、国土交通省よりタクシー料金運賃改定が発表され、翌年2020年2月より全国25都道府県48地区で実施されました。

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原因は「コロナ禍」だけでなく…

2020年代…値上げ…苦渋の決断…。これだけ考えれば察しは付くと思います。

タクシー業界でも、会社や地域によって増減はあるものの、コロナ禍によるお客様の減少によって、タクシー業界の維持を保つためというのもあります。これは否定できません。
しかし、タクシー運賃値上げの原因はそれだけではありません。

タクシーを走行させるのに必要不可欠な燃料はガソリンではなく「LPガス(液化石油ガス)」です。
その原油となるのがガソリン同様「石油」であり、言うまでもなく高騰しております。

さらに近年は安全走行のために必須となった「ドライブレコーダー」や利便性向上と感染防止対策も含めた「キャッシュレス決済端末」、「新型コロナウイルス感染防止対策機器類」等の導入で現場の費用負担が増加していることが原因とみられます。

このため、国土交通省によりますと昨年2021年末以降、「東京特別区・武三交通圏」245社のタクシー会社から運賃値上げをお願いする申請が相次いでいたとのことです。

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運賃改定の申請基準を超える

実は、運賃改定をするには申請が必要になります。

そういは言ってもタクシー会社一社が独断で行ったところで運賃が変わるわけでもないですし、何かしら改定を行う「根拠」「理由」が無ければ他社・他区域のタクシー会社の賛同なんぞ得られないでしょう。
無論、同一区域内で一社のみが料金を変更して営業することも原則できません。

これまでも「ライドシェア反対」や「タクシーアプリ合流で〇〇交通と〇〇無線が合流」などのタクシー業界内における大きなイベントでも、度々足並みを揃っては、崩れたりと言った事例がありました。

そうした中、前回の2019年に行われた「420円の運賃改定」ですら『増税と同時進行』で行う思惑があったにも関わらず内閣府など省庁から意見調整があり遅延した経緯があります。

さて、話は戻りますが、タクシーの運賃改定手続きを行う場合、『3か月以内に改定を行う対象区域の7割以上の申請が必要』となります。

しかし、昨年12月24日から3月23日の締め切りまでにタクシー会社からの申請が9割(車両台数:27,303台)を超えたことが明らかになりました。

このことから、現場は値上げに消極的でなく、むしろ積極的に行ってほしいという答えが出たことが数字として明らかになったという訳です。

また、現場の声として「キャッシュレスの決済で1,500万~2,000万円近く手数料が引かれる」、「ガソリン高騰と同時進行でLPガスも高騰しているんだ」という状況の中、コロナ禍での収益減少に少しでも歯止めをかけたい構えです。

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早ければ今年秋にも

国土交通省では、このような現場の事態を重く受け止め、早ければ本年度2022年秋にも本格的にタクシー運賃の値上げを敢行する予定です。

東京首都圏で敢行されれば、2007年に初乗り運賃が660円から710円に値上げして以来、15年ぶりとなります。

とある大手タクシー会社では、現行の東京特別区・武三交通圏の初乗り運賃『1052mまで420円』を『500円』に値上げし、現行の加算額『233mごとに80円』から『228mごとに100円』という案を要請したとのことです。

国土交通省の地方支分部局で運輸・交通に関する業務を行う関東運輸局では、すでに本格的な改定に向けた審査に入っており、6月を目途に値上げの可否を決定すると同時に、国土交通省とともに適切な値上げの改定率を検討したのち、10月下旬頃を目途に改定額を定める方針です。

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変動運賃制の実証実験はどうなる?

タクシーの基本料金はキロ数や時間などで決められますが、近年では政府内で「時間帯や天候などによって運賃を変動してもよいのでは」という案も政府内で出ていました。

それが「ダイナミック・プライシング」です。

分かりやすく言えば『スーパーマーケットのタイムセール』『バスの土日運賃値下げ』のようなもので、タクシーの利用率が少ない日中の時間帯はタクシー運賃を安く設定し、お客様利用の多い夜やタクシー需要の高い「悪天候の日」などにはタクシー運賃を高く設定するという仕組み。

昨年2021年5月には国土交通省が検討を開始し、同年8月には実証実験を行うことを明らかにしています。
実証実験はタクシー配車アプリ「GO」を運営するMobility Technologies社とUber社の2社によって昨年10月11日から11月30日まで行われました。

ですが、この実証実験で国道交通省は当時「運用上の課題を抽出することで、今後の制度化に向けた検討材料とする」という事でしたので、おそらく今回の運賃値上げで白紙になってしまう可能性が高いと言えるでしょう。

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お客様の理解得られるか

今回のタクシー値上げのニュース、お客様はどう思われているでしょうか?

▼お客様によってまちまちですが…街の声です。

  1. お客様A:「タクシー高いです。もうちょっと安くなってほしい」
  2. お客様B:「この間値下げしたばかりなのに…」
  3. お客様C:「もともとそんなに乗らない。特段高いとは思わない」
  4. お客様D:「仕方ないのでは?価格高騰やコロナ禍はどうにもならない」
  5. お客様E:「そうは言ってもタクシーは必要不可欠なんで乗りますよ!」
  6. お客様F:「むしろ今まで安かったと思いますね」

お客様の多くは「値下げ」という言葉には敏感であり、お得感に駆り立てられる事があります。
しかしこれは反対の「値上げ」となると、生活に結びついている商材や費用に関しては敏感になり、一歩尻込みしてしまう…。それは消費者たるもの当然の心理です。

ではこの「値上げ」という厄介者を現場は味方に付けるために、そしてお客様に理解を得るために、今後どのように営業を行っていけばよいでしょうか?

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現場は今こそ改めて「価値向上」を


対価という言葉が世の中にはあります。

商売で値上げを敢行するということはデフレなどの、やむなき事情があっての事がほとんどです。
しかし、値上げを敢行しても相応かそれ以上のサービスや品質をお客様に提供するならば、多少高価な金額をお支払い(投資)しても全く問題がないという事例も、世の中には存在しますよね。それを「対価」と呼びます。

お客様に理解を得られるために大切なこと、それはタクシーの品質を、これを機に底上げすることでではないでしょうか?

確かにこの東京首都圏のタクシーは、10年位以上前からタクシードライバーの質が大きく向上しました。
昔のような「運ちゃん」「神風」と揶揄された横柄なドライバーとは違い、しっかりと丁寧な接客を行い、快適に目的地までお届けする「おもてなし」「ホスピタリティ精神」を持ったタクシードライバーの教育が大手タクシー会社を筆頭に施されてきました。

その甲斐もあり、都内のタクシー会社のイメージは少しずつ変化し今では「新卒採用」「女性ドライバー」などジェンダーレスかつ国際的な採用を行う現場が増えつつあります。その背景には東京オリンピック・パラリンピックに向けてのインバウンドを狙ったものがありました。

残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響で期待されたような需要は得られませんでした。しかし、日本は世界が誇るビジネス市場と観光資源大国です。
コロナ禍の収束が見え始めた時代にタクシーがニューノーマルに対応できるかどうかが重要な鍵となります。
そしてこの国は現在、少子高齢化社会や人口減少といった課題が多くあります。
そこにタクシーが今後どのように存在意義を見出せるか…そこに重要な可能性が秘められていると思います。
だからこそ今一度「灯台下暗し」、つまり足元を確かめて接遇一つを見直してみてはどうかと考えます。

まだすべての会社が接遇の品質がピカイチであるかと言われると…正直行き届いていないタクシー会社もあるのが現状です。
今の時代を悲観ととらえるか、チャンスと捉えるか、それでこの数年先が変わる気がしてなりません。

(タクシー採用コンサルタントさんのぼやき)

この運賃改定は営業区域全体に行われる制度なので、いちサービス業として「タクシー業界の価値・質を上げる」せっかくのチャンスでもありましょう。

評価をするのはお客様

タクシードライバーやタクシーの評価を行うのはお客様です。

行ってしまえば「運賃値上げ」はタクシー業界の都合によるものです。
お客様には関係ないことです。

もちろん、タクシー会社も、働くタクシードライバーの生活も大切でしょう。
ですが、業務を行う上では最も大切なことは「お客様を快適に目的地まで運ぶこと」です。

今まで以上に接遇の質を高める意識をもって運転、接客を行えばお客様も「これだけよくして頂けたならタクシー代安いもんだわ」と思ってくれる方もいらっしゃると思いますよ。
(但し十人十色のお客様がいらっしゃいますので、状況に合った対応をお勧めします。)

これから~Opinion~

いかがでしたでしょうか?
単純に「値上げ」となるとなかなかお客様に理解していただくのは難しいのが現実です。
もう国民の生活に馴染んでいる「マクド〇ルド」や「セブン〇レブン」の値上げとは違いますよね。

タクシーを利用されるお客様の心理は、「値上げ」と聞くとやはりどうしても尻込みしてしまう気持ちになるかもしれませんが、どうか現場の状況をご理解いただきたいと思います。
日々サービス向上に奮闘しており、頑張るタクシードライバーを、乗車という形で応援していただけたら嬉しく思います。

現場目線で見ると、タクシーはハイヤーのような高級な乗り物ではありませんよね。
ですがタクシーにお客様が乗車してハイヤー並みの対応されたら、きっとお客様は気持ちよく利用できて、「また利用したい!」と思ってくださるのではないでしょうか?

原則法人タクシーは『タクシードライバーの指名』というのが就業上できませんが、『タクシー会社の指定』であれば今、スマートフォンのタクシー配車アプリで簡単にお気に入り登録をして配車出来ます。
そういったところかお客様を獲得していくら小さな努力も、コロナ禍で喘ぐタクシー業界そのものを助けることになりますよ。

運賃値上げは致し方ない事ですが、お客様も、現場の皆様も、ひとつここは前向きにとらえて迎えたいところです。

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