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大阪府が全タクシーの25%をUD車両へ目標掲げる

大阪府が全タクシーの25%をUD車両へ目標掲げる

バリアフリー、そしてユニバーサルデザインの導入は平成に入り、地域の公共施設を見渡しても設備投資が大きく進んだように思えます。
もはや日常では当たり前になっており、「当たり前でなくてはならないもの」でもあります。

公共交通機関においても、鉄道車両の車いすスペース、ノンステップバスの普及が進み、企業も障がい者雇用枠や大手企業の特例子会社の設立などがあります。
すべての人に、生きやすい社会のサポートを促進していく中、タクシー業界でも、関西方面で動きがありましたのでお伝えします。

大阪府が全タクシーの25%をUD車両へ目標掲げる

大阪府はこの度、府内のタクシー全タクシーの25%を『ユニバーサルデザインタクシー車両(以下:UD車両)』へ置き換え導入します。
これは2022年4月13日に大阪府の吉村洋文知事の定例会見により発表したものです。

会見では、主に新型コロナウイルス感染拡大防止による保健所の対応、自宅療養の際に発生する配食配送・パルスオキシメーター発送の件、医療の進捗状況といった時節柄の内容の中に、UD車両の調達をタクシー事業者へ今一度促す内容となりました。

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大阪・関西万博を見据えて

UD車両の導入の大きな目的は、2025年に大阪市此花区夢洲で開催される大阪・関西万博を見据えて、お客様の誰もが安全・安心で快適に移動できる公共交通手段を確保することです。

吉村知事の会見によると大阪府の目標は「2025年度末というのを1年前倒しで2024年度末までに、大阪府内のタクシーの総台数の25%をUDタクシーに変更できるように」ということを目指していきます。

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4月14日より申請受付開始

導入補助の申請受付は、定例会見翌日の4月14日より開始しており、期限は年内2022年12月28日としています。
大阪府のタクシー事業者の割合では、UDタクシーの導入は未だ2.4%の普及率とのこと。
そもそも普及がなされていないというのが現状です。

UDタクシー導入補助の狙いとして、上述の「2025年の大阪・関西万博へ向けての交通バリアフリー面を整備する」だけでなく、大阪府のUDタクシー普及率の低さというものがあります。

ただ、これにはタクシー事業者側の痛切な事情もあり、踏み切りたくても踏み切れないという現状があります。

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対象事業者の詳細・補助など

その大きな理由として、UDタクシーは、通常のタクシー車両に比べてコストが高額になる点です。
概ね通常のタクシーですと、セダンタイプで1台あたり180万円前後という相場ですが、UDタクシーとなれば1台あたり300万円前後のコストが発生します。

そのため大阪府では、補助対象車両を購入する府内タクシー事業者、リース事業者に対してUDタクシー導入に係る補助を行います。

補助上限額ですけれども、大阪府、大阪市、それぞれ30万円ずつ補助しまして、合計で60万円の補助になります。これとは別に国の補助というのがあって、最大60万円の国の補助があります。
国の補助を受けた者は補助の対象外としまして、国の補助か、あるいはこの大阪府市の補助か、どちらも60万円で同じ金額ですので、その国の補助、大阪府市の補助、これを合わせた形で1200台というのを目指していきたいと思います。
なので、120万円の補助になるわけではありませんが、それぞれ60万円ずつになります。
そして、大阪府市のそれぞれ30万円ずつですので、大阪市外の事業者については30万円の補助と、大阪府のみの補助ということになります。
【2022年4月13日:吉村洋文大阪府知事の定例会見より抜粋】

また、この補助金申請はパソコン、スマートフォンで申請が可能とのこと。
大阪府内のタクシー事業者の皆さまは地域密着と利益向上にもつながる制度となっております。

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そもそも、UDって?

「非常口」マーク。日常に溶け込みすぎてますよね。これは正式にはUDではないのですが、役割としては同様。つまり先駆けと言えます。

ここではユニバーサルデザイン(以下:UD)について解説しましょう。
実はUDそのものは、1985年にアメリカ・ノースカロライナ州立大学のユニバーサルデザインセンターのRonald Mace(ロナルド・メイス)氏によって提唱されたものです。

ユニバーサルデザインは公共施設のみならず、日常で利用する生活必需品なども含めて多くの分野で活用されています。

東京オリンピック・パラリンピックの開会式を思い出してください。
パフォーマンスや各競技の紹介で話題になった「ピクトグラム」や日常でよく目にする「非常口マーク」も、実は「UD」の先駆けと言われています。

ユニバーサルデザインの基本コンセプト&7原則

ユニバーサルデザインの基本コンセプトは、「年齢や能力、状況などにかかわらず、デザインの最初から、できるだけ多くの人が利用可能にすること」です。

つまり、今日の日本で問題となっている「少子高齢化社会への対応」や「障がい者福祉」のみにスポットを充てているという訳ではなく、「様々なお客様」に配慮・考慮したコンセプトと言えましょう。

以下UD(ユニバーサルデザインには7つの原則があります。)※抜粋

  1. どんな人でも公平に使えること。(Equitable use / 公平な利用)
  2. 使う上での柔軟性があること。(Flexibility in use / 利用における柔軟性)
  3. 使い方が簡単で自明であること。(Simple and intuitive / 単純で直感的な利用)
  4. 必要な情報がすぐに分かること。(Perceptible information / 認知できる情報)
  5. 簡単なミスが危険につながらないこと。(Tolerance for error / うっかりミスの許容)
  6. 身体への過度な負担を必要としないこと。(Low physical effort / 少ない身体的な努力)
  7. 利用のための十分な大きさと空間が確保されていること。(Size and space for approach and use / 接近や利用のためのサイズと空間)

バリアフリーとは異なる

実はよく混ざりがちな「バリアフリー」という観点と「UD(ユニバーサルデザイン)」は大きく異なります。
バリアフリーは高齢者や障がい者が社会生活を送る上で支障のある障壁を取り除く施策として、一定の効果は得られ、現在でも多くの公共施設でも採用がされております。
ただし、「高齢者」「障がい者福祉」という面に絞ってしまい、結果として様々な利用者を考慮することが容易でなくなったことも事実です。

バリアフリー「後から壁を除去する」というコンセプトで考えられたものに対して、UDは「最初から誰でも使いやすいデザイン」というのがコンセプトです。

日常の我々の暮らしを振り返ってみてもわかるように、家にいても、外にいても、仕事をしていても様々な懸念事項があると思います。
その中で障壁を都度取り除くより、最初から暮らしやすい、動きやすい状況であれば良い訳です。

ただ、日本国内では、バリアフリーが多くの公共施設で見られるようになったとはいえ、まだ不十分なうちに「ユニバーサルデザイン」が紹介された経緯があり、コンセプトが同一化されてしまったり、まだ理解がされていない部分もあるのが現状です。

近年提唱がされているSDGsの中でも『No one will be left behind』(誰も取り残さない)はユニバーサルデザインのコンセプトに近いとされています。

東京首都圏タクシーではUD研修義務化

「UDタクシー」…もしかしたら初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。
略称してしまいましたが、正式名称は「ユニバーサルデザインタクシー」

UDタクシーという車両を扱う以上、該当車両を運転するタクシードライバーは「UD研修」なるものを受講しなくてはなりません。

タクシー会社が独自で行う研修とは別に、バリアフリー研修推進実行委員会(※一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会が開発・推進)と一般財団法人全国福祉輸送サービス協会が合同で「UD研修」を行っております。

目的は「接遇向上」を目的とした、お客様との円滑なコミュニケーションスキルを研修するもですので、決して福祉に特化したものという訳でなく、総合的なサービス研修と言えましょう。
(『バリアフリー研修推進実行委員会』という名称がまだ整備が整い切れていない様相を感じます…。)

タクシーの営業区域のひとつ、東京23区(港区、中央区、千代田区、文京区、新宿区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区、板橋区、豊島区、北区、台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区)と武蔵野市・三鷹市を管轄する東京特別区・武三交通圏では、タクシードライバー全乗務員がUD研修の受講を必須となっています。

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JPN TAXIはUDタクシー車両

2017年に登場した次世代型タクシー車両「JPN TAXI」東京首都圏では今セダンタイプよりも、この「JPN TAXI」の割合が圧倒的に高くなりました。

車体は標準グレードタイプの「和」と、上級グレードタイプの「匠」が存在し、いずれも2WDの5人乗り。
車内は広々とした空間が特徴で、荷物も多く入ることから、ホテルや空港送迎にも合致。
また、USBコンセントも搭載しているため、ビジネスシーンのみならず、プライベートでもありがちな「スマートフォンやパソコンの充電をしたい」場合に大活躍。

登場以降、UDタクシーとして様々な機能を搭載し、華々しくデビューを飾るも、エンドユーザーや現場などから様々な意見があり、幾度かマイナーチェンジを行いました。
現在のJPN TAXIは2021年5月に登場から3度目のマイナーチェンジを施しての販売に至っております。

ちなみにあまり知られていませんが、JPN TAXIは「マイカー」としても販売しております。
(JPN TAXIのベースは同社のコンパクトカーミニバンの「シエンタ」)
主にタクシー以外では福祉サービスを行う事業者などが購入をしたりするそうで、なかなかマイカーで購入する方は少ないようです…。

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これから~Opinion~

UDタクシーは、地域柄、あるいはタクシー事業者の裁量によって導入の積極度に差が出るように感じます。
そもそもが今後タクシー車両がJPN TAXIを筆頭にUDタクシーへと大きくシフトチェンジしていくことは顕著であるため、タクシー求人の中で「絞り込まれる条件」となってくるのではないでしょうか。

タクシー求人のカウンセリング業務を行っていた身として、印象に残っているのは、求職者の方も「タクシー業界に興味がある、転職をしたいという時点ですでに「顕在層」なので、ある程度の情報を調べているという事」です。
あとは、我々に『気持ちをプッシュしてほしい』ということだけ。
であれば、選ばれる会社としては、タクシー求人でも絞り込まれる、選ばれる内容になるのは至極当然となってくるでしょう。

時代に合わせると言うと語弊を生じるかもしれませんが、避けて通れない現実に背を向けると気が付いたときに手遅れになっている事がよくあります。これが事業者の運営レベルとなれば深刻なことですよね。

今回は大阪府・大阪市でしたが、地域でもし補助金などの制度を導入してUDタクシーの導入が可能であれば、求人数向上、地域密着活性化、利益向上のために今後もぜひタクシー事業者の方は活用していただきたいと思います。

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