航空管制官の仕事に迫る

私事ですが先日、和歌山の紀三井寺、片男波や雑賀崎、そして黒潮市場などを散策しました。雑賀崎の町並みは南イタリアの漁港を想起させ、灯台では360°のパノラマを堪能しました。遠くに見えた「友ヶ島」いまはラピュタの世界と似ていることから人気ですが、本来は軍用地でした。いつか行ってみたいです。
尖閣諸島に灯台を作った石原慎太郎氏、そして石原慎太郎氏が国会で横田基地返還を訴えた勇ましい姿などを思い出しました。横田空域が如何に日本の空の交通の妨げになっているか、基地問題、日米地位協定に何ら言及しない石破首相、首相就任前の勇ましい言葉の数々はどこに行ってしまったのでしょう?
昨年の羽田空港の衝突事故の映像は未だ私の脳裏に焼き付いています。私の妹の仕事である「航空管制官」あまり内容が知られていないその仕事に迫ってみたいと思います。
羽田空港では1日約1300回飛行機が離着陸しています。関西空港では万博開催中ということもあり1日約500回でしょうか。コロナが過ぎ、飛行機需要が高まるなか、管制官の数は増えていない、むしろ減少傾向と言われています。
空の安全は人と人とのコミュニケーションで成り立っています。管制官の仕事で最も重要なことはチームワークです。人間の目2つのうち、ひとつは管制室のガラス窓の向こう、ひとつは管制モニターや同僚の横顔へ。2つの耳のうち、ひとつはパイロットとの交信もうひとつは管制室の同僚の会話に注がれます。顔が見えない相手との交信は洞察力が求められます。聞き取り易く、世界共通の英語、実際はより聞き取り易く専門用語も多々あるのですが、とても神経を使う仕事です。
ご存じの方が多いと思いますが、管制官は国家公務員です。航空会社やパイロットが民間であるのに、管制官が公務員、公正中立な第三者機関という立場にあるのは「利害にとらわれない判断をするため」です。例えばゴーアラウンド(着陸やり直しで一周回れ)の指示ひとつで、大空港であれば時間のロスに加え周回範囲が広いため、約15万円の燃料代損失になります。利益を追求、あるいは自社目線で仕事をする民間企業では純粋な判断ができないことが想定
されます。
ですから、安全かつ円滑な航空交通を確保するためには管制官には「国土交通大臣と同じ権限を持って指示を出す」(航空法第96条)とされ、それだけ責任が重い仕事と言えるのです。
タクシーの運転はAIロボットでもできます。管制官の仕事は車の運転と比べて何倍も複雑であり、それはF1レーサーのような運転をロボットができないことと同じで、AIロボットが管制官の仕事をこなすのは極めて難しいでしょう。
囲碁の世界チャンピオンがAIロボットに取って代わっても、アイルトンセナ(いまのF1の有名人を知らないので昔の人を挙げますが)の運転をロボットが取って変わるなど不可能でしょう。
AIも過去の人間の英知の集結であることを考えるとAIが管制官の判断を代替する日はまだまだ先でしょう。既に日本の管制業務ではレーダー、TCAS、ADS-B、マルチラテレーション、関連警報判定システムなど最新の技術で成り立っています。
とはいえ離発着ともに平面×高さ×速度、3次元の世界で位置調整をしています。これに「時間」を加えると4次元。時間といっても緻密に計算された時間です。各機が着陸する空港付近で自動的に適性な間隔で一列に並ぶ状態を作るにはパイロットは決められた時間に離陸、決められた地点を決められた時間に通過することに集中し
ます、気づいたら決められた順番に、決められた滑走路の前に並んでいる、といった完全管理された航空交通が実現すれば、管制官の仕事はぐっと楽になるでしょう。これは手数が減るという意味であり、繰り返しますが、飛行機が空を飛ぶ限り、絶対的に人間が管理監督しなければならない仕事、それが航空管制官です。
毎日毎日空の安全を確保する皆さまに、心から敬意を表し、感謝の念に絶えないことを申し上げます。お読みいただきありがとうございます。
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